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関節リウマチ

関節リウマチとは

関節リウマチは、免疫系の異常によって体が自分自身の関節を攻撃してしまう「自己免疫疾患」で、主に関節に慢性的な炎症を引き起こします。この病気は、関節だけでなく全身にも影響を及ぼすため、早期診断と適切な治療が極めて重要です。

病態・進行のメカニズム

関節リウマチは、関節内の滑膜に炎症を起こすことで始まり、その炎症が進行することで関節や骨が破壊されます。

  1. 滑膜の炎症(滑膜炎)
    滑膜が異常に増殖し、パンヌスと呼ばれる病的な組織を形成します。これが関節軟骨や骨を侵食します。
  2. 炎症性サイトカインの作用
    TNF-αやIL-6などのサイトカインが炎症を悪化させ、軟骨や骨の破壊を引き起こします。
  3. 関節の変形と機能障害
    進行すると、関節の変形(スワンネック変形、尺側偏位など)や可動域の制限が生じます。

関節リウマチは、早期の炎症制御が関節破壊を防ぎ、将来の生活の質を大きく改善します。発症から6か月以内に治療を開始することで、関節変形のリスクを大幅に低減できます。

関節リウマチを放置すると起こる問題

  • 関節破壊や変形により、日常生活動作(歩行、食事など)が制限されます。
  • 炎症が全身に影響し、心血管疾患や骨粗鬆症、肺疾患などの合併症を引き起こす可能性があります。

関節リウマチの症状

関節リウマチは、主に30〜60歳代に多く発症し、特に働き盛りの世代に影響を与えることが多いです。女性は男性の約4倍発症しやすいとされています。これは、女性ホルモンが免疫に影響を与えることが原因の一つと考えられています。高齢者の発症も増加しており、60歳以降の新規発症も珍しく、男性の割合が増えるのも特徴です。

関節リウマチの主な症状は以下の通りです。

関節の痛みと腫れ

最初に現れることが多い症状で、特に手指、手首、足の指などの小関節に多く見られますが、膝や股関節などから発症することもあります。
炎症の特徴として、腫れや熱感を伴い、進行すると関節が硬くなります。

朝のこわばり

朝、手や指が硬く感じて動かしづらくなる症状です。関節リウマチの特徴として、60分以上持続する場合が多いです。

左右対称性の関節炎

両手首や両足の指関節が痛むなど、左右両方の同じ関節に炎症が現れることが多いのが特徴です。

全身症状

関節以外にも、微熱、倦怠感、体重減少、食欲不振といった全身症状が現れることがあります。
これらの症状は、炎症性サイトカイン(IL-6, TNF-αなど)の過剰分泌が原因です。

関節リウマチは早期に治療を始めれば、炎症を抑え、関節の破壊を防ぐことが可能です。適切な治療を続けることで、仕事や趣味を楽しむ日常生活を維持できます。もし、朝のこわばりや関節の痛みを感じたら、ぜひ早めに専門医を受診してください。

関節リウマチの診断

関節リウマチの診断は、症状、血液検査、画像検査の組み合わせで総合的に判断します。

  1. 臨床症状の確認
    痛み、腫れ、こわばりの程度や左右対称性の有無を評価します。
  2. 血液検査
    リウマトイド因子(RF)の測定:関節リウマチの患者で陽性率が高い。
    抗CCP抗体:診断の特異性が高く、早期診断に有用。
    炎症マーカー(CRP、赤血球沈降速度):病気の活動性を評価。
  3. 画像検査
    X線:骨びらんや関節裂隙狭小化を確認。
    超音波:滑膜の炎症や液体貯留を早期に検出。
    MRI:骨の初期病変や滑膜炎を詳しく評価。
  4. 診断基準
    2010年ACR/EULAR分類基準を参考に、関節の数、血液検査の結果、炎症の持続期間を基に診断します。

関節リウマチの治療

当院では、病気の種類や進行度、患者さんの生活環境に合わせた総合的な治療を行います。治療の主な目的は、炎症を抑え、関節の破壊を防ぎ、患者さんの生活の質を向上させることです。以下に、代表的な治療内容をご紹介します。

薬物療法

リウマチ性疾患において、薬物療法は治療の中心となります。リウマチの治療は、症状が和らいだからといって薬をやめてしまうと再発することがあります。治療は長期にわたることが多いですが、適切に進めることで生活の質を大きく向上させることができます。定期的な通院と検査を通じて、自分に最適な治療を見つけていきましょう。

以下は主な薬剤とその役割です。

  1. 抗リウマチ薬(DMARDs: Disease-Modifying Antirheumatic Drugs)
    メトトレキサート(MTX)は、関節リウマチの「標準治療薬」として広く使用される代表的な薬です。関節リウマチの進行を抑制し、関節破壊を防ぐために処方します。病気そのものに働きかけ、長期的に症状を軽減します。投与量や頻度は、患者さんの病状に応じて調整されます。
  2. 生物学的製剤:TNF阻害薬、IL-6阻害薬、B細胞抑制薬など
    皮下注射や点滴で投与されます。いずれも免疫の過剰反応を抑えるために使用します。抗炎症効果が高く、難治性の関節リウマチに特に効果的です。効果が高い一方で、高価な薬剤であり、感染症リスクに注意が必要です。
    【代表薬】エンブレル(エタネルセプト)、ヒュミラ(アダリムマブ)、アクテムラ(トシリズマブ)など
  3. JAK阻害薬
    経口で服用できる新しいタイプの治療薬です。IL-6を含む複数のサイトカインの働きを抑え、炎症を軽減させます。生物学的製剤の注射ができない方や、生物学的製剤に反応しにくい患者さんに使用されることが多いです。効果が高い一方で、高価な薬剤であり、感染症リスクに注意が必要です。
    【代表薬】オルミエント(バリシチニブ)、リンヴォック(ウパダシチニブ)など
  4. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
    炎症や痛みを抑えるために使用します。日常生活の痛みの軽減を目的とした補助療法です。病気そのものの進行を止める効果はありませんが、痛みや腫れを一時的に軽減します。
    【代表薬】ロキソプロフェン、セレコキシブ
  5. ステロイド薬
    急性症状のコントロールや重症の全身性疾患(膠原病)に使用します。強力な抗炎症効果で、病気の活動性を短期的に抑えます。長期使用では副作用(骨粗鬆症、糖尿病、高血圧など)が問題になるため、最小限の投与量に調整します。
    【代表薬】プレドニゾロン 

治療の進め方

  1. 初期治療
    病気の進行を早期に抑えるため、メトトレキサートを中心に治療を開始します。症状が強い場合は、ステロイド薬を併用することもあります。
  2. 症状が安定しない場合
    生物学的製剤やJAK阻害薬を追加します。必要に応じて投与薬剤を切り替えながら、最適な治療法を模索します。
  3. 長期管理
    症状が安定している場合でも、薬物療法を継続します。副作用のチェックと症状の再発防止のため、定期的に検査を行います。

注:上記は一般的な関節リウマチの治療例であり、患者さんそれぞれの病状に応じて薬剤を使い分けて治療を行います。

薬物療法以外の治療

薬物療法に加えて、生活の質を高めるためのアプローチも行います。

  • リハビリテーション:
    関節の動きを維持し、筋力を保つための運動療法を行います。
  • 栄養指導:
    体重管理や炎症を抑える食生活の提案(魚、野菜、オメガ3脂肪酸など)をします。
  • 手術:
    関節が破壊された場合には、関節形成術や人工関節置換術が検討されます。当院では東北大学病院などと連携し、手術適応例については紹介を行っています。

関節リウマチのリハビリテーション

関節リウマチのリハビリは、病気の進行を抑えつつ、関節の機能を維持し、日常生活を快適に過ごすための重要な治療の一環です。リウマチ性疾患では、炎症が進むと関節が硬くなり、筋力が低下するため、薬物療法と並行してリハビリを行うことが推奨されます。

リハビリの目的

  1. 関節の可動域を保つ
    炎症による硬直や変形を予防し、動きを維持する。
  2. 筋力を強化する
    痛みによる運動不足で低下した筋力を回復し、関節を支える力を高める。
  3. 関節に負担をかけない動作を学ぶ
    日常生活での関節の使い方を工夫することで、関節への負担を軽減。
  4. 痛みや炎症の緩和
    軽い運動や温熱療法で血流を改善し、炎症や痛みを和らげる。
  5. 生活の質(QOL)向上
    痛みや不便さを減らし、自立した生活をサポートする。

リハビリの内容

1. 関節可動域訓練

  • 目的: 関節の動きを改善し、硬直を予防。
  • 具体的な運動:
    • ゆっくりと手首や指、足首を動かすストレッチ。
    • 可動域を維持するための軽い体操(例: 手をグーにして開く、指を一本ずつ曲げる動作)。
  • 注意点: 痛みがある場合は無理をせず、炎症が落ち着いたタイミングで行います。

2. 筋力強化トレーニング

  • 目的: 筋力をつけることで関節を保護し、負担を軽減。
  • 具体的な運動:
    • ゴムバンドや軽いダンベルを使ったトレーニング。
    • 足や膝周りの筋肉を鍛える軽いスクワットやレッグリフト。
    • 手の握力を維持するための柔らかいボールを使った握る運動。
  • 頻度: 週2~3回、無理のない範囲で実施します。

3. 有酸素運動

  • 目的: 心肺機能を向上し、疲れや倦怠感を軽減。
  • 具体的な運動:
    • ウォーキングや自転車こぎ(室内トレーニング用バイクなど)。
    • 水中での軽いエクササイズ(水中歩行など)も関節に優しく効果的。
  • 注意点: 負荷が高すぎる運動は避け、関節に優しい動きを心がけます。

4. 温熱療法と冷却療法

  • 温熱療法:
    • 温湿布やホットパック、温泉療法を使い、筋肉をほぐし血流を改善。
    • 朝のこわばりがあるときや運動前に適しています。
  • 冷却療法:
    • 急性炎症が強い場合に関節を冷やして痛みを緩和。
    • 氷嚢や冷湿布を使用します。

5. 日常生活動作(ADL)の指導

  • 目的: 関節に負担をかけずに日常生活を送る方法を学ぶ。
  • 具体例:
    • 重いものを持つときは関節全体を使い、指だけに負担をかけない。
    • 関節を保護するための装具やサポーターの使用。
    • 長時間同じ姿勢を避けるようアドバイス。

リハビリ時の注意点

  1. 炎症が強い時期は無理をしない
    • 痛みが強いときや関節が腫れている場合は安静を優先します。
  2. 専門家の指導を受ける
    • リハビリは整形外科医や理学療法士の指導の下で行うのが理想的です。
  3. 継続性が大切
    • リハビリの効果を得るには、無理のない範囲で継続することが重要です。