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整形外科

整形外科とは

整形外科は、骨、関節、筋肉、靭帯、腱、神経といった運動器官全般を対象とした診療分野です。これらの組織は、体を動かすための「仕組み」を構成しており、整形外科ではその障害や疾患を診断し、治療を行います。患者さんの主訴は、痛み、しびれ、変形、腫れ、運動機能の低下など多岐にわたり、適切な対応によって生活の質(QOL)を向上させることを目指します。

診療の目的

整形外科の主な目的は、以下の3つです:

  1. 痛みの軽減:慢性的な痛みを和らげ、生活の質を改善する。
  2. 運動機能の回復:関節や筋肉の動きを取り戻し、日常生活やスポーツ活動への復帰を支援する。
  3. 生活の質の向上:適切な治療により、患者が健康で自立した生活を送れるようサポートする。

受診のタイミング

以下のような場合は、整形外科の受診を検討してください:

  • 痛みが長期間続く(腰痛や関節痛など)。
  • 手や足のしびれがある。
  • 日常生活や仕事に支障をきたす運動障害がある。
  • 外傷後、腫れや変形が見られる。

整形外科は、症状の進行を防ぎ、患者さんの生活をより快適にする重要な医療分野です。適切な治療を受けることで、体の健康を保ち、より充実した生活を送ることが可能です。

診療対象となる症状・疾患

痛み

痛みは整形外科を受診する最も一般的な理由の一つです。単なる不快感ではなく、日常生活や仕事、趣味に影響を与えることが多いため、適切な診断と治療が必要です。

  • 腰痛:最も多い訴えの一つで、急性のぎっくり腰や慢性的な腰痛症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などが原因です。特に慢性腰痛は姿勢の悪さや筋力不足も関係し、生活習慣の改善が治療の一部となることもあります。
  • 膝痛:立つ、歩く、階段を上るなど、日常の動作で膝の痛みを訴える患者が多くいます。変形性膝関節症による軟骨のすり減りやスポーツによる靭帯損傷が主な原因です。
  • 肩痛:五十肩として知られる肩関節周囲炎は、肩の可動域が制限されることが多いです。また、肩腱板損傷や石灰沈着性腱炎など、さまざまな疾患が痛みの原因となります。
  • 首の痛み:頸椎症やストレートネックが一般的な原因ですが、むち打ち症などの外傷後症状もよく見られます。首の痛みは頭痛や腕のしびれを伴うこともあります。
  • 手足の痛み:腱鞘炎やばね指、足底筋膜炎などが主な原因です。特に手首や足底は酷使しやすく、作業や運動による負担が影響します。
  • 関節痛:リウマチや変形性関節症、痛風など、関節そのものが炎症や変形を起こす疾患が関連します。早期診断が重要です。

運動障害

運動障害は、体を動かす基本的な機能が損なわれた状態を指します。これにより日常生活の質が大幅に低下するため、迅速な対応が求められます。

  • 歩行困難:股関節や膝の変形性疾患、脊椎疾患、神経障害が原因で歩行が難しくなることがあります。例えば、脊柱管狭窄症では短距離しか歩けない「間欠跛行」が特徴です。
  • 関節の動きの制限:関節の可動域が制限されることで、腕を上げられない、足を曲げられないといった症状が現れます。これには五十肩や変形性関節症、外傷後の癒着が関係します。
  • 筋力低下:加齢や筋肉疾患、神経麻痺が関連します。特に筋力低下が進行する場合、運動リハビリや筋力トレーニングを組み合わせた治療が効果的です。

しびれ・麻痺

しびれや麻痺は、神経が圧迫されたり損傷を受けたりすることで起こります。放置すると症状が進行し、日常生活が困難になることもあります。

  • 手足のしびれ:最も一般的な原因は椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症です。圧迫された神経が炎症を起こし、手や足にビリビリとした感覚や感覚鈍麻が生じます。
  • 神経麻痺:顔面神経麻痺や腕神経叢障害など、特定の神経が麻痺することで筋力が低下します。症状が長引く場合は、精密検査や手術が必要になることもあります。

変形・腫れ

体の外見に現れる変化や腫れは、患者さんが最初に気づく症状の一つです。

  • 骨の変形:外傷後の不適切な骨癒合やリウマチ性疾患が原因となることがあります。見た目の問題だけでなく、機能的な障害を伴うこともあります。
  • 関節の腫れ:関節炎や外傷による炎症、感染症が主な原因です。腫れが長期間続く場合、関節内の損傷や病変が疑われます。
  • 外反母趾:足の親指が外側に変形する状態で、女性に多く見られます。靴の形や歩行時の負荷が悪化要因となるため、装具療法や手術が必要な場合があります。

外傷(けが)

整形外科での外傷治療は、早期診断と適切な処置が求められます。

  • 骨折:骨が完全に折れる場合や不完全骨折があります。高齢者では骨粗鬆症が原因となることが多く、特に大腿骨頸部骨折が重要です。
  • 捻挫:関節を支える靭帯が伸びたり切れたりすることで生じ、足首や手首が最も一般的です。
  • 脱臼:関節が正常な位置から外れる状態で、肩関節や股関節に多く見られます。
  • 打撲:筋肉や皮下組織が損傷し、腫れや内出血が生じます。重大な場合は骨折が伴うこともあります。

姿勢・体型の異常

成長期や加齢に伴う体の変形は、早期の治療が重要です。

  • 側弯症:思春期に発生しやすく、成長とともに進行する可能性があります。特に重度の場合、外科的治療が必要です。
  • O脚・X脚:膝の軸の異常で、関節の負担が増えるため早期治療が推奨されます。

その他

特定の疾患や特殊な状況も整形外科の対象です。

  • 骨粗鬆症:骨密度の低下により骨折しやすくなる疾患で、薬物療法や栄養指導が行われます。
  • スポーツ障害:靭帯損傷、腱炎、疲労骨折など、スポーツ活動に関連した疾患です。競技を続けながら治療を進めるため、専門的なアプローチが必要です。
  • 腫瘍(骨・軟部組織):良性・悪性を問わず、適切な診断と治療が求められます。

整形外科の治療方法

整形外科では、症状や疾患の種類、進行度、患者さんの年齢や生活環境に応じて、保存療法、手術療法、予防的治療といった幅広い治療法が選択されます。

保存療法

保存療法は、外科的手術を行わずに症状を改善する方法です。初期の段階や軽度の疾患で特に有効であり、以下のアプローチが一般的です。

薬物治療

薬を用いて痛みを和らげたり、炎症を抑えたりする治療法です。患者さんの症状に合わせて以下の薬が使用されます:

  • 鎮痛薬(NSAIDs):ロキソプロフェンやイブプロフェンなど、炎症を抑えながら痛みを緩和する薬です。
  • 筋弛緩薬:腰痛や筋肉の緊張が原因の痛みに対して用いられます。
  • ヒアルロン酸注射:関節内に注射して軟骨の保護や滑らかな動きを促進させることを目的とします。
  • ビタミン剤:神経障害(手足のしびれ)に対するビタミンB12製剤です。
  • 骨粗鬆症治療薬:カルシウム、ビタミンD、ビスホスホネート系薬剤など、骨密度の低下を防ぐために使用します。

リハビリテーション

リハビリは、運動能力の回復や痛みの軽減を目的として行われます。以下の療法が含まれます:

  • 運動療法:筋力強化やストレッチを行い、可動域を広げる。変形性膝関節症や腰痛に対して有効です。
  • 物理療法:温熱療法、電気治療、超音波治療を用いて血流を改善し、痛みや炎症を抑えます。
  • 作業療法:日常生活で必要な動作を訓練し、機能を改善します。

装具療法

患部を保護し、動きを制限するために以下のような装具が使用されます:

  • コルセット:腰痛や脊椎疾患で腰を安定させるために使用します。
  • サポーター:膝や手首などの関節を保護し、動きを補助します。
  • インソール(靴中敷き):外反母趾や足底筋膜炎に対して足のアライメントを整えます。
  • ギプスや副木:骨折や捻挫の固定に使用します。

手術療法

保存療法で改善が見られない場合や、重症の疾患では手術が選択されます。整形外科で行われる手術は、機能回復や痛みの軽減を目的として以下のように多岐にわたります。

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 骨折の整復や固定手術

骨折した部位を元の位置に戻し、金属プレートやスクリューで固定します。以下のような手術が行われます:

  • 観血的整復固定術:皮膚を切開し、金属を用いて骨を固定します。
  • 髄内釘固定術:大腿骨や上腕骨などの骨髄腔に金属製の釘を挿入して固定します。

人工関節置換術

変形性膝関節症や変形性股関節症など、関節が著しく損傷した場合に行われる手術です。

  • 膝関節置換術:膝の関節面を人工関節に置き換え、スムーズな動きを取り戻します。
  • 股関節置換術:損傷した股関節を金属やセラミックの人工関節で置換します。

内視鏡手術

関節鏡を用いた低侵襲手術で、膝や肩の疾患に適用されます。

  • 膝の関節鏡手術:半月板損傷や前十字靭帯断裂の治療します。
  • 肩の関節鏡手術:肩腱板損傷や石灰沈着性腱炎の治療します。

予防的治療

予防的治療は、疾患の進行を抑えるだけでなく、発症を防ぐための取り組みを含みます。

骨粗鬆症の進行抑制や栄養指導

骨粗鬆症は、早期発見と適切なケアが重要です。主な予防的アプローチには以下が含まれます:

  • カルシウムとビタミンDの摂取:骨を強化し、骨密度の低下を防ぎます。
  • 運動指導:適度な負荷をかけた運動(ウォーキングや軽い筋トレ)で骨の強度を維持します。
  • 生活指導:禁煙、アルコールの摂取制限、転倒予防のための住環境の改善を検討します。

スポーツ障害予防

スポーツを楽しみながらも障害を防ぐため、フォームや生活習慣の見直しが行われます:

  • フォーム改善:競技中の動作解析を行い、関節や筋肉への負担を軽減させます。
  • ストレッチやウォームアップの指導:筋肉や靭帯の柔軟性を高め、けがのリスクを下げます。
  • 装具の活用:スポーツ時に適したサポーターやインソールの使用を検討します。

整形外科の治療方法は、患者さん一人ひとりの症状や生活環境に応じて選択されます。適切な治療を受けることで、痛みの軽減、機能の回復、疾患の予防が可能です。治療に加え、早期受診と定期的なケアが重要です。